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アフターコロナを見据える「新しい演劇」を作り出す――「STAGE GATE VRシアター」の挑戦

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創業以来30年間、舞台演劇の制作に携わってきたシーエイティプロデュースとVR撮影、VRサービスを提供するアルファコードがVRを使用した新たな観劇スタイル「STAGE GATE VRシアター」にて「ディファイルド」を公開しています。

 

コロナ禍にあって、演劇のスタイルが問われる今、VRと演劇が融合することで、どんな作品に仕上がっているのか、シーエイティプロデュース代表取締役江口剛史氏と、アルファコード代表取締役社長CEO VR事業統括 VR/MR コンテンツプロデューサー水野拓宏氏に話を聞いてきました。

 

江口剛史氏(右)と水野拓宏氏(左)

 

舞台の中に入り込むVR観劇

――演劇とVRの融合と言われてもどんなものか想像つきにくいのですが、ライブコンテンツをVRでどのように表現するのでしょうか。

 

水野拓宏氏(以下水野):VR(ヴァーチャルリアリティ)と言うとゲームやCGの世界を思い浮かべる人は多いと思いますが、私としては、VRは体験だと考えています。たぶん、VRで観劇というと、観客席のもっとも良い席にカメラが設置してあって、VRゴーグルを使用して視聴すれば、すべての人が一番良い席で観られると言う印象だと思います。

 

今回は、体験がテーマなので、舞台上に3つのカメラを用意し、犯人側、刑事側、中央と立場を変えて観ることができます。今回の舞台は朗読劇に近いので、そもそもVRで舞台を観る必要があるのかと問われると、たぶん、一般的な考え方で言えば必要性は低いと思います。

 

しかし、体験としてのVRに意味があると思います。舞台では犯人と刑事のふたりしか登場せず、その会話が中心となってストーリーは進んで行きますが、VRで観ている人は、そのどちらかの相棒や部下のような立ち位置として劇に入り込めます。また、自由に犯人側、刑事側とスイッチングができるので、どちらか一方に偏ることなく観られます。

 

江口剛史氏(以下江口):VR観劇と言っても、実際に劇場では観客が入っています。コロナ禍ですので、十分に席の間を作り、収容人員を抑えています。無観客でVRのみの配信も考えましたが、舞台役者にとってお客さんの反応は大事なので、そういう意味でも観客を入れて公演することにしました。

 

劇場で観ているお客さんはいつも通りの演劇として観て貰えます。劇場でVRゴーグルをかけて観劇するわけではありません。VR配信の方は舞台の中に入り込むイメージなので、単純に舞台をカメラに収め、動画で配信するものとは違うわけです。なので、劇場で観劇した人もVR配信を観るとまったく違ったものとして観ることができます。

 

――VRではライブ配信ではなく、数日後に配信されると聞きましたが。

 

水野:ライブ配信は挑戦してみたかったんですけど、今回は録画したものを配信しています。今回の公演は全部で39回あります。毎回キャストが変わるので、配信も舞台と同様に毎回違うキャストで配信されます。まだVRでの配信は始めたばかりで、39回すべてをライブ配信するとなると、かなりのリスクとなってしまいます。

 

そこで、すべての回をVRで配信する代わりにライブ配信は諦めました。ただ、配信はアーカイブスとして残るわけではなく、劇場と同様に決まった時間から始まり、見逃すと観られなくなってしまいます。好きな時間から見始められるわけではないので、ある意味ライブ感がある仕様となっています。

 

 

江口:VR配信は19時から行われており、上演時間は約70分です。VRに集中して観られる限度内の時間にしました。先ほど水野さんがおっしゃったように朗読劇に近いので、舞台上で役者が大きく動くわけではないですが、役者と同じ舞台に立って観られるので、役者の表情とかがよく分かるようになっています。

 

 

新しい演劇の価値を提供するためのVR

――そもそも演劇をVRで配信しようと考えたのでしょうか。

 

江口:現在、コロナ禍で現実離れした経験をしています。演劇界も緊急事態宣言やソーシャルディスタンスなどで、ほとんどが中止や延期に追い込まれました。つまり、今まで現実でできたことができなくなったわけです。演劇もこれまでと同じことをしようとしても、もうできないので、これまで以上のことをし、これまで以上の価値を提供しなくてはならないと思っています。その一環としてのVRです。

 

水野:ただ、演劇にVRを入れるのはまだまだ難しいところもあります。VRは、まだまだ完成の域にあるものではなく、現実とヴァーチャルの区別が付かなくなる程には至っていません。今回の舞台も撮影自体は11Kで行っていますが、配信では4Kまで落としています。11Kで配信したいけど、それはまだ難しいわけです。観る側もOculus GoやPico G2のような専用ゴーグルで観る人も居れば、スマートフォンで観る人も居ます。多くの人に観て貰うには低いスペックで視聴される可能性も考慮した結果です。

 

 

江口:今回の「ディファイルド」は、9.11のころに書かれた作品なんですが、コロナ禍の現状とすごくマッチしているんですよね。そういった部分を読み取って貰えると面白いと思います。なので、VRであるなし以前に十分に面白いコンテンツにはなっています。

 

水野:観劇の新しい形として、面白い試みではありますが、VRをヘビーに使って居るユーザーからみればVRにする意味があるのかって言われそうではありますね(笑)。ただ、VR配信をすることになって、改めて人がものを観ることを考えた時、人はあまり視点を大きく動かさないんですよね。なので、ゲームやCGのVRのように、仮想空間の中を自由に動けると言うわけではないですが、決まった画角の映像を観る通常の舞台中継配信とは、視聴者の感じ方や見方はその人次第となるわけです。

 

――なるほど、コロナ禍が新しい演劇の形を生み出したわけですね。コロナ禍が過ぎたあと、VR演劇はどうなっていくのでしょうか。

 

江口:そうですね。コロナ禍の現在としては、ウィズコロナとして、劇場での観劇のガイドラインを作り、それを遵守することで、公演をしていきたいと思っています。今回のVR演劇は客席数を減らしただけでなく、VR配信用のカメラは据え置きで、カメラマンなどのスタッフは配置していません。いかに密にならないかを考えています。

 

コロナ禍が終息したとしても、VR演劇は続けていきたいですね。演劇の稽古は密になりがちなので、集まって稽古をする必要のない朗読劇となりましたが、コロナ禍終息後は通常の舞台劇でVR配信をしてみたいです。

 

コロナ禍が終息しても地方の劇場で演劇をするのはしばらく難しいと思います。なので、どの場所でも観られるVRが地方のファンへの対応のひとつになるのではないでしょうか。

 

水野:舞台の上で行われている演劇をそのまま撮るだけでなく、VRならではのCG合成などの加工を入れて現実を超えるような体験を創ってみるのも面白いですよね。

 

STAGE GATE VRシアター vol.1 『Defiled-ディファイルド-』

・会場・日時:DDD青山クロスシアター 7月1日(水)~8月2日(日)39公演
・作:LEE KALCHEIM
・翻訳:小田島恒志
・演出:鈴木勝秀

・出演キャスト(総勢19名の出演者が2名1組となり、毎日日替わりで上演します)

猪塚健太/ 伊礼彼方/上口耕平/加藤和樹/岸 祐二/小西遼生/章平/鈴木壮麻 /成河/千葉哲也/中村まこと/羽場裕一/東 啓介/前山剛久/松岡 充/三浦宏規/水田航生/宮崎秋人/矢田悠祐 (※ 50 音順)

・主催/企画制作:株式会社シーエイティプロデュース
・撮影/技術協力:株式会社アルファコード

・ストーリー
ハリー・メンデルソン、図書館員。自分の勤める図書館の目録カードが破棄され、コンピュータの検索システムに変わることに反対し、建物を爆破すると立てこもる。目まぐるしく変化する時代の波に乗れない男たちが、かたくなに守り続けていたもの。神聖なもの。それさえも取り上げられてしまったら…。 交渉にやってきたベテラン刑事、ブライアン・ディッキー。緊迫した空気の中、巧みな会話で心を開かせようとする交渉人。拒絶する男。次第に明らかになる男の深層心理。危険な状況下、二人の間に芽生える奇妙な関係。果たして、刑事は説得に成功するのか。

・配信日時:2020年7月6日(月)19時~8月14日(金)19時(予定)
・配信方式:時間指定ストリーミング配信
・視聴料金:3500円 (税込)
・販売方法:チケットぴあにて販売(チケットぴあURL:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2019376

公式サイトはコチラ

 

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撮影/我妻慶一


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